2022年3月8日火曜日

「ポメラ DM250」は出るのか ?

ポメラ DM250 が出るらしいというウワサが流れております。

最初の情報は、つぎのtweetでした。

ref. https://twitter.com/futafi_namu/status/1488372271911608323

キングジムの技適情報を照会した所、DM250という製品の登録情報が発見された、との事です。

発売から5年を経たポメラ DM200の価格は下落しており、最終処分段階に達したと目されております。
このタイミングで、DM250という情報がもたらされた事で、ポメラユーザーにとっては、まさに「干天の慈雨」と、期待が寄せられている格好であります。

DM200は、蓋のヒンジ部分、開け締めに由来すると思しき、画面変色問題が少なからずあり、購入1年以内でも実費修理となるケースが報告されておりました。

多くのユーザーは気にせず購入した模様ですが、中には、この件が気になって、なかなか手が出なかった、という向きも居た模様。

DM200では、Gメール利用による「疑似クラウド保存」の機能が盛り付けられました。
これなどは、無線LANの機能がハードウェアに用意されているからこその機能でありましたが、
DM200のカーネルがLinuxであり、ネットワーク機能を盛り込める事から、クラウドストレーヂを利用する事自体は可能となっていた模様。

OS/GUIにAndroid OSを盛り付けるには、電池容量が少ない事から、独自の「ポメラShell」ともいうべきファームを取り付けた、と説明されております。

一方で、製品がAndroid PCベースで構成されていて、カーネルにLinuxを採用している事から、命知らず(?)がポメラShellを迂回する様にシステムを改変、X window systemを取り付け、モバイルLinux端末として利用するというハッキングが開発され、一部のマニヤは喜々として利用していたという話もあります。
DM200でデスクトップを動かす際の不自由さは、X GUIを採用するにああたってのポインティング・デバイスが用意されていない点でした。
これを解決するため、キー操作でポインタを擬似操作するクライアントを用意するなどの工夫が必要となっていたそうです。

DM200自体は、単体で十分に「熟成」した商品構成でした。
DM250という型番から、DM200の改善版ではないか、と見る向きもあり、従来のDM200に存在した画面変色問題が改善されたのではないか、と期待されておりますが、同時に、製品の性能・機能の大幅な向上は見込めないものかと推察されます。

DM200のGメールによる擬似クラウド保存機能は、無線のつながりがイマイチだったという報告もあり、この辺りを改善する程度の改良はありそうです。
DM250の技適情報をみると、測定した電波強度の数値が、DM200のそれと比較して若干大きいように思われれます。これは本体設計の見直しによる、画面変色問題への対応と、電波出力の改善、という側面があるのではないか、と期待したい。
あと、DM200のX GUIマニヤ向けに、ポインティング・デバイスの提供、ハードウェアの付加というのは考えやすいのかも知れません。
DM200より壊れにくくなれば、DM250は広く受け入れられる製品になる事が期待されます。

...

一方、DM200発売から5年以上を過ぎ、DM200が終売に近づきつつある今日、果たしてDM250が発売されるのか、という不安もあります。

DM250、出てくれるといいのですが。

「ポメラ DM300」はあるのか ?

KingJimのポケット・メモ・ライター「ポメラ」は、最新機種・DM30が発売されましたが、比較的早い時期に終売され、今日ではDM200のみが残るのみとなっております。
 

  • DM30は、E-Inkディスプレイを採用し、「伝統の」折りたたみスタイルを踏襲した、乾電池稼動の製品でした
  •  DM200は、フルキーサイズで、かなり大きなディスプレイを採用、エディタ部分やATOKも最新のもので、文書入力に最高の機能を提供する製品です


DM200の中身は、安手のAndroidタブレットと同様らしい、という分解報告がありました。そして、Androidでは稼働時間が確保できないという理由で、カスタムLinuxを採用した製品であると言います。

ただ、設計が甘いのか、使用しているとディスプレイが変色する場合があるという報告があり、この場合、1年の無償修理保証が適用されず、実費修理との事。この修理実費がバカにならないそうです。

DM100の後継製品として計画されたDM200ですが、今日から振り返るに、こんな製品設計があったのだろうか、などと想像をたくましくしてみました。
 

  • フルキーボディーで、更に画面が大きくできる
  • それに伴い、エディタ部分の機能向上
  •  さらにクラウド文書保存も出来たらウレシイ ?
  •  同時に、ATOKもより高機能なものに

DM100ユーザーのフィードバックを得て、こうした製品設計にしたのでしょう。
そのために新しいハードウェアを準備したのだと思います。

しかし「上記の目的を達するため」、
 

  • 乾電池では稼働できず、リチウムイオン充電池の採用
  • 無線機能も準備
  •  中身はAndroid PCに準じているので、Linux を採用

となっており、安価なAndroid PC並のハードウェアとなっておりますが、新しい設計は意外に出来が甘く、壊れやすいという問題をはらんでもおりました。

DM200がAndroid PC並のハードウェア、というのを見て思い出したのが、DM200の前には、「ポータブック」というノートPC製品でした。
ポータブックは、変形収蔵キーボードを備えたWindows ノートPCでした。Officeソフトも動作し、プレゼン資料も作成できるなどが売りになっておりましたが、高額だった事があり、余り普及はしなかったため、早々に処分特価となって終売の憂き目に。

DM200はポータブックの反省に基づいて計画されたのでしょう。そして、テキスト入力専用という絞り込みで考えて企画したのだと思われます。

DM200の発売の後、E-Inkディスプレイ採用のDM30が登場しました。
DM30では、E-Inkディスプレイ採用により乾電池で長時間の稼動が達成されたそうです。
また、新しい設計の折りたたみ構造により、携帯性を向上させております。
同時に、DM200ではやり残した「携帯性」、「乾電池駆動」を実現するため、新しい折りたたみ構造とE-Inkディスプレイを採用しましたが、残念な事にDM200ほどの機能を盛り込むことは出来ず、早々の販売終了となってしまった。

DM200の出来が甘かった事で、今日ではDM200の後継機を求める声がありますが、今日の状況から、後継機 (「DM300」と仮称)に求められる項目を考えてみようと。
 

  • 更に大きなディスプレイ
  • エディタで扱える文字数の拡大 (100万文字とか)
  • エディタの機能向上

などが考えられます。すると、これらはWindowsノートPCで十分実現可能なのであります。
今日のノートPCは、大画面が気軽に利用でき、SSDの採用も手伝って、電池も十分長く稼働します。
OSモ、安価なデバイスを提供できるChrome OSなどの選択肢もあります。
更に、GPD pocket, OneMix などのポケットサイズのノートPCまで登場するに至りました。

ノートPCとの比較で、ポメラの長所としては、

  • 乾電池で長時間稼動
  • テキスト入力専用で、作業に集中できる

などがありましたが、DM200ほど高機能を盛り込んでしまうと、上記の2点もあやしくなってしまい、そこへDM200の液晶変色問題が追い打ちをかけて来ます。

DM200のボディーを手直しするなどすれば、液晶変色問題の多くは解消される可能性があるのですが、KingJimとしては、そこまで手を入れたくはないのでしょう。
そこで、DM30を販売したのですが、DM200の代わりとはならず早々に終売、今日に至っております。

...

DM300という製品が企画されているのか、まだ判りません。
果たして、ポメラの新製品は登場するのでしょうか ?

2022年3月2日水曜日

随想・PB-100

 先日、当方の次の記事の閲覧がありました。

ref. 映画「ゴーストバスターズ」にまつわる話題

https://akatuki-724.blogspot.com/2016/02/blog-post_16.html

 

それを記念(?)して、以下、作品中で出ているCASIO PB-100についての「随想」を。

CASIO PB-100は、今でも「銘機」だったのではないか、と。


当時のポケコンというと、SharpがPC-1210/1211、PC-1501, PC-1250/1251といった製品を出しており、CASIOはFX-501/502P, FX-601/602P, FX-702Pといった製品を取り揃えていた筈。

FX-501/502P, FX-601/602Pは、ポケコンではなくプロ電という製品でしたが、FX-702Pは、ポケコンスタイルの、BASIC言語搭載の製品だった。FX-702Pは、当時の定価が39,800円だったはず。
所が、PB-100は定価 14,800円と、まさにブロックバスターでした。

PB-100は、低価格で勝負するためなのか、色々と工夫が盛り込まれたらしい。

当時のポケコンの液晶表示器、多くは20桁以上の表示でしたが、PB-100のそれは12桁で、画面右には、隙間を埋めるがごとく「モード一覧」を印刷しておりました。これなどは、液晶の桁数を削る事でコストダウンを図った、一つの例と言えそうです。
その昔、CASIOは低価格電卓「カシオミニ」を世に問うたおり、計算表示の桁数を6桁に抑える事で、コストダウンを図ったというのは有名な所です。
当時、論理回路を駆使して加算回路などを構成したそうですが、桁数が増えると、その分、加算回路などを稠密に構成し、ICへ盛り込まないとならなかったのですが、6桁で抑えると、回路規模がかなりコンパクトに出来るとの事で、コストダウンを図ったのだと言われております。
PB-100の5x7 dot matrix character液晶表示器も、桁数を少なくする事で部品コストを下げる工夫があったのではないか、と。

PB-100のプロセッサは「VLSI採用」と謳っておりました。
昔のICは、集積度によって、SSI (Small Scale Integration), MSI (Mid Scale Integration), LSI (Large Scale Integration)と呼び分けられており、LSIよりも集積度が多いものをVLSI (Very Large Scale IC)と呼んでおったそうです。

ポケコンのハードウェアは、プロセッサと液晶コントローラが主なコンポーネント、と言えそうですが、PB-100のプロセッサは、液晶コントローラをまとめた、当時としてはかなり大掛かりなもので、VLSIとしたらしい。当世、流行りのSoC (System on Chip)のハシリの様な感じだった。

ref. Casio FX-700P - hardware
http://www.pisi.com.pl/piotr433/hardware.htm

海外で発売されたPB-100相当品「FX-700P」の情報であります。
これによると、SoCプロセッサ・HD61913A01には、ROMも内包し、キーボードピンも出ている。こうなると、「ワンチップ・ポケコン」であります。

CASIOのポケコン、主にHitachiの供給するプロセッサが使われてきたらしく、HD61913A01の型番から、このプロセッサもHitachi製と思われます。今日、安価なモノクロ液晶コントローラの主流は、Hitachi製が多いと言います。この頃のデザインが継続されているのかなぁ ?

PB-100では、低価格を追求していたので、液晶も12桁で抑えたのか、と思えるのであります。そして、表示の少なさを「スクロール表示」させるというソフトウェア面でカバーした。なかなか、ウマイ事を考えたのです。

他にも、PB-100のコストダウンの追求は「マイクロマネージメント」的に、随所に伺えます。
例えば、シフトキーの横に、Fnキーの「穴」とランドが設けられていたというのは有名であります。後に、FX-700Pだったか、で、ここにFnキーを設置したものが登場しました。

今にして思うと、BASICによるプログラムが動いて、液晶表示版に結果を表示する事の出来る、小気味よい製品でした。規模こそ違うながらも、当時の8bit PCが出来る様な事を、安価に、そして持ち運んで何時でも使えるのでしたから。

ポケコンは、出自がプロ電の様な所もあり、BASICもBCD計算が十全に行えました。それで様々な技術計算の用途にも利用されるなど、プログラム関数電卓としての利用が進んだものでした。

一方、CASIO BASICでは、KEYコマンドにより、リアルタイムキー入力にも対応していて、簡単なゲームプログラムも楽しめたものです。
SharpのPC-1210/1211には、この機能がなく、上位機種のPC-1501になって搭載されたのですが、その分、価格も高くなってしまった。
そこへ、PB-100が、安価という武器で殴り込みを掛けたのです。

Sharpも落ち着いては居られなかったのか、PC-1501とは別系統のPC-1250/1251シリーズを投入しました。1250/1251は、サイズがPB-100よりも小さく、メモリも2KB/4KBと大きく液晶も24桁と十分な大きさがありましたが、それだけにコストダウンには至らず。
その後、液晶表示器の桁数を16桁に抑えたPC-1245を投入するのですが、機能はPB-100より上ではあるものの、価格 (17,800円だったはず)は今ひとつ及ばないのでした。


2022-03-07 追記

以降は、本筋とは無関係の私見であり、蛇足であります。
時代に取り残されたポンコツなユーザーの思い出の様なものです。

今日、個人が気軽に利用できる情報機器としては、スマートフォンが広く普及しており、ポケットコンピュータ自体は製品ジャンルとして終焉しました。
これも時代の要請と言えるところでありましょう。

本邦における最初のポケコン製品を発売したSharpは今日、総合家電メーカーとして、様々な製品を開発しております。電卓は言うに及ばず、スマートフォン、PCも開発しております。
「電卓は今もって製造しているのであるから、ポケコンは無理だとしても、せめてプロ電くらいは製造してくれてもいいのではないか ? 」
しかし、それは無理というモノ。Sharpは当時、最先端情報製品としてポケコンを開発、発売しました。そして、今日では、それらの最新技術製品は、PCやスマートフォンに取って代わっております。
Sharpは、ポケコンのプロセッサも内製しておりましたが、それは、技術開発力が有り余っていたからこそ出来たもので、しかも、十分に開発資金が投入できたからこそのものであった。
そうした「先端技術製品」は、投入した技術の開発経費回収が必要なので、安くは出来そうもありません。Sharpの最新製品に掛ける意気込みは、電卓製品の様な「枯れた」分野には適用されないのだろうと思われます。
それが如実に現れているのは、Sharpの電卓製品、2021/01以来、新製品の投入が見られないあたり。まあ、枯れた製品ではありますから、維持しているだけでもマシなのかも知れません。

一方で、CASIOについてみると、ポケコンの終焉は当然としても、グラフ電卓の最新製品であるfx-CG50を投入、ファーム更新も進めており、今日ではupythonまで採用しております。
ここに、CASIOは「電卓事業を継続する」という強い意志の現れをみてとれるのであります。

もちろん、upython電卓は、海外が主な策源地であり、Numworks, TI, HPなどが展開を進めております。そこへ、元祖グラフ電卓の雄・CASIOが敢然と挑戦しているのであります。頼もしい所であります。
fx-CG50は、HitachiのSH4プロセッサを採用しているとの事ですが、遡るとPB-100(以前 ?)からの縁とも見て取れます。ポケコンのプロセッサまで自製していたSharpは、コストダウンを図る事が出来ず、最後にはポケコン事業も終了し、プロ電も事実上終焉しております。

CASIOがコストダウンに賭けた姿勢とは、果たして何だったのか ?
それは、技術製品を広く、市民の道具として普及させるという「使命」であったのではないか。そうした使命があって、PB-100などが企画された。それを伺わせるのが、PB-100に付録した「BASIC教本」だったりします。
また、後のポケコン製品向けに、ビデオ教材なんかも用意しておりました。
故・熊倉一雄氏のナレーションによるらしいビデオ教材らしいのですが、今から思うと、かなり贅沢な作りだったと。

今日、こうした成果が、例えば計算サービスサイト「keisan.jp」や、education.casioなどに活かされております。

CASIOの「継続」する姿勢、遠巻きながら見守りたいのです。